資産配分を考える
長期的な資産形成を始めるとき、どのような金融商品に投資すればよいのでしょうか。今後も成長が期待できそうな米国企業の株式でしょうか。それとも、インフレに強いとされるゴールド(金)でしょうか。あるいは、値動きが比較的小さい債券を選ぶべきでしょうか。
将来、どの国、どの企業、どの資産が最も値上がりするかを正確に予測することは困難です。そのため、長期投資では、特定の国や企業だけに資金を集中させるのではなく、幅広い投資先に分散させることが基本となります。金融理論では、株式や債券、不動産など、投資可能なさまざまな資産を価値に応じて時価総額加重で保有するのが効率的だとされています。
金融理論においては、資産を時価総額加重で持つとは株式だけでなく、債券、不動産など、幅広い資産が含まれます。しかし、現実には、世界中のすべての資産を正確な市場価値の比率で保有することは困難です。非上場企業の株式、現物不動産、インフラなど、個人が簡単には購入できない資産も多く存在します。また、ゴールドや原油、小麦などの商品については、株式と同じように時価総額を明確に計算することができません。また、仮に多くの資産を組み合わせられたとしても、管理が複雑になり、手数料や売買の負担が大きくなる可能性があります。
そこで、投資を始める方の第一歩としては、世界中の株式に幅広く投資できる全世界株式インデックスファンド(投資信託)を利用する方法が、有力な選択肢となります。
全世界株式インデックスファンド
長期的な資産形成の有力な選択肢となるのが、時価総額加重型の全世界株式インデックスファンドです。投資対象は、日本、米国、欧州、新興国など世界各国の株式です。
現在、米国企業は世界の株式市場で大きな存在感を持っています。しかし、今後も米国株が他の地域を上回り続けるとは限りません。日本や欧州、新興国の株式が米国株を上回る時期が訪れる可能性もあります。将来、どの国の株式が最も上昇するか分からないのであれば、最初から世界中の企業に幅広く投資していくのが分散投資です。全世界株式インデックスファンドを保有すれば、米国、日本、欧州、新興国など、多数の国や地域の企業に、一つの商品で投資できます。なぜ、なぜ分散投資が重要なのかについては、こちら↓をご覧ください。
(1)全世界株式に連動する代表的な指数
全世界の株式市場を対象とする代表的な指数には、次のようなものがあります。
(ア)MSCI ACWI
MSCI ACWIは、先進国と新興国の大型株・中型株を対象とする全世界株式指数です。日本を含む多数の国と地域の企業で構成されており、世界の投資可能な株式市場の約85%をカバーしています。以下の2つはMSCI ACWIに連動する投資信託です。特にeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)はオルカンと呼ばれており有名です。
- ・eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(信託報酬:0.05775%)
- ・楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド(信託報酬:0.0561%)
(イ)FTSE Global All Cap Index
FTSE Global All Cap Indexは、先進国と新興国の大型株・中型株・小型株を対象とする全世界株式指数です。MSCI ACWIよりも小型株まで広く含むことが特徴で、世界の投資可能な株式市場の約98%をカバーすることを目指しています。
- ・SBI・全世界株式インデックス・ファンド(信託報酬:0.0638%)
MSCI ACWIとFTSE Global All Cap Indexでは、対象となる企業の規模などに違いがあります。ただし、どちらも世界中の株式市場に幅広く投資することを目的とした指数であり、長期的な値動きはおおむね似た動きをしています。
(2)購入時の注意点
(ア)信託報酬と実質コスト
投資信託を保有している間は、信託報酬などの運用コストが継続的に差し引かれます。また、投資信託の運用では、信託報酬以外にも、株式の売買費用、監査費用、保管費用などが発生することがあります。これらを含めた実際の費用は、一般に「実質コスト」と呼ばれます。年間のコスト差は小さく見えても、10年、20年、30年と運用期間が長くなるにつれてコストの影響が累積し、最終的な資産額に大きな差が生じます。下の図はリターンが5%の投資信託で信託報酬が1%と0.1%の場合の資産額の推移を示しています。30年後には約957万円の差となります。このため、同じような指数への連動を目指す商品であれば、運用コストが低いものを選びましょう。

(イ)指数との連動性
インデックスファンドは、対象とする指数と同じような値動きを目指して運用されます。しかし、運用コスト、売買のタイミング、配当への課税などの影響により、実際の運用成績は指数と完全には一致しません。対象指数に対して安定して連動し、コストを差し引いた後の乖離が過度に大きくないものを選びます。上記の3つの投資信託は、対象指数との乖離が大きくないため投資先として適しています。
(ウ)純資産総額
純資産総額が極端に小さい投資信託は、将来、運用が終了して繰上償還される可能性があります。純資産総額が一定規模に達しており、継続的に資金が流入している商品は長期保有に適しています。
オルカンは、低コスト、指数との連動性、純資産総額などの点から、有力な選択肢の一つでしょう。
全世界株式以外の資産について
長期的な資産形成では、株式は成長性が期待できる資産です。投資期間が長く、大きな値下がりにも耐えられる人であれば、全世界株式インデックスファンドを中心に資産形成を始める方法が有力です。ただし、株式は短期的に大きく値下がりする可能性があることは常に心に留めておきましょう。
大きな値下がりが心配な場合、債券、ゴールド、不動産投資信託であるREITなどを追加すると、株式だけの場合と比べて資産全体の値動きを抑えられます。資産が少ない人でも、値下がりを抑えたいのであれば、現金や債券を多めに保有しても構いません。
どの資産をどのくらい持つかはアセットアロケーションと呼ばれ、いろいろな考え方があります。有名な考え方の一つに、株式と債券の2種類の資産を保有し、株式比率を「100-年齢」%とする方法があります。20歳の人であれば、株式は80%、債券は20%です。60歳の人であれば、株式は40%、債券は60%です。年齢を重ねるごとに債券比率を高め、安全性を高めていくアセットアロケーションです。
念のための注意ですが、生活に必要な資金まで株式に投資してはいけません。数年以内に使う予定のお金や、値下がりすると困るお金は、普通預金、定期預金、個人向け国債など、安全性の高い資産で保有してください。
まとめ
長期的な資産形成では、将来値上がりする国や特定の企業を予測して集中投資するよりも、世界中の企業に幅広く分散する投資がおすすめです。全世界株式インデックスファンドを利用すれば、少額の資金でも、多数の国や企業に投資できます。まずは全世界株式インデックスファンドを買って資産形成をスタートしましょう。


