資産形成

4(9) iDeCoを活用しよう

 iDeCoは、「個人型確定拠出年金」と呼ばれる自分自身で用意する年金制度です。国民年金や厚生年金といった公的年金への上乗せを目的としたもので、自分自身で老後資金を準備する仕組みがiDeCoです。国はiDeCoを推進するために、掛金を支払うときおよび受け取るときに税制上の優遇を用意しています。ただし、iDeCoにもデメリットがあり、原則として60歳まで資産を引き出せないなどの制約があります。iDeCoの利用する際の基本的な流れは、次のとおりです。

  1. 毎月一定額の掛金を拠出する
  2. 定期預金、投資信託などから運用商品を選ぶ
  3. 掛金を長期にわたって運用する
  4. 原則60歳以降に年金または一時金として受け取る

なお、将来受け取れる金額は、支払った掛金の合計だけでなく、どの商品を選びどのような運用成果になったかによって変わります。iDeCoは、年金のように将来の受取額があらかじめ決まっている制度ではなく、自らの運用結果によって受け取り金額が変わる制度です。

iDeCoのメリット

(1)強制貯蓄

 老後資金を半強制的に積み立てられるiDeCoの資産は、原則として60歳まで引き出せません。一見するとデメリットですが、「老後資金を途中で安易に使ってしまわない」という点ではメリットです。老後資金と思って貯めていても、住宅、自動車、旅行、教育費などになんだかんだと使ってしまう可能性があります。iDeCoであれば、基本的に老後まで引き出せないため、老後資金を目的別に確保しやすくなります。

iDeCoの掛金は、基本的に月額5,000円から設定でき、1,000円単位で金額を決められます。ただし、拠出できる上限額は、会社員、公務員、自営業者、専業主婦(夫)などの職業や、勤務先に企業年金があるかどうかによって異なります。注意点としては、家計に余裕がない状態で無理に掛金を増やすと、原則として60歳になるまで資産を引き出せないため急な出費に対応できなくなる可能性があることです。長期間無理なく続けられる金額にする必要があります。

(2)節税

 iDeCoでは、掛金の所得控除による節税効果を毎年受けながら、老後資金を積み立てられます。多くの所得税や住民税を支払っている人ほど、掛金控除の効果が大きくなります。また、60歳を超えてiDeCoからお金を引き出すときにも、投資に普通使われる特定口座に比べて節税効果があります。このブログでは2つの節税について説明していきます。

(A)所得控除

 一つ目は所得控除による節税です。まず、iDeCoで支払った掛金は、「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、その年に支払った掛金の全額を所得から控除できます。所得控除とは、所得税や住民税を計算するときに、税金計算の基礎となる所得から一定額を差し引ける制度です。例えば、毎月1万円をiDeCoに拠出した場合、1万円×12カ月=12万円となり、この12万円が所得控除の対象です。仮に所得税率が10%、住民税率が10%であれば、単純計算では年間の税負担軽減額は次のようになります。

12万円×20%=2万4,000円

iDeCoによって毎年2万4,000円の節税になるのです。ただし、これは税金が減るという仕組みであるため、もともと税金がかかっていない場合は効果がありません。所得税や住民税がほとんどかからない人は、掛金を拠出しても所得控除によるメリットがないことに注意が必要です。課税所得がない人は、もともと納める税金がないので節税にはなりません。

 なお、この所得控除を得るためには年末調整・確定申告を行う必要があります。会社員の場合は年末調整または確定申告、自営業者などの場合は確定申告で手続きが必要です。iDeCoの事務を扱っている国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が毎年10月頃に送られてくるため、この書類を使って年末調整または確定申告を行います。手続きを怠ると、iDeCoの掛金を支払っていても所得控除を受けられません。小規模企業共済等掛金払込証明書が届いたら、紛失しないように保管して年末調整・確定申告を行いましょう。

(B)将来かかる税金が軽減できる

 2つ目は運用益や受取時にかかる税金の軽減です。通常、投資信託などの金融商品で得た運用益には、原則として20.315%の税金がかかります。まず、iDeCoは運用益だけじゃなく元本にも税金がかかる可能性があることに注意しましょう。このことに注意しながらiDeCoにかかる税金の回避方法を説明しましょう。うまくやれば元本だけじゃなく運用益についても税金をゼロにできます。これはNISAと似ていますが、やり方はNISAよりも少し複雑です。順に説明していきます。

まず、iDeCoで積み立てた資産は、主に次の方法で受け取ることができます。

  • ・ 一時金としてまとめて受け取る
  • ・ 年金として分割して受け取る
  • ・ 一時金と年金を組み合わせて受け取る
  •  

一時金として受け取る場合は、原則として「退職所得控除」の対象になり、これが節税となります。年金として受け取る場合は、「公的年金等控除」の対象になります。どちらもiDeCoにかかる税金を減らすことが可能ですが、税金をゼロにすることを目指すなら退職所得控除の適用がよいでしょう。

退職所得控除(一時金で受け取る場合)

 iDeCoで貯めたお金を一括で受け取る場合は退職所得控除を受けることができます。退職所得控除は、一般的に勤続年数やiDeCoの加入期間などに応じて計算されます。退職所得控除額は、次のとおりです。

  • ・ 20年以下:40万円×年数
  • ・ 20年超:800万円+70万円×「年数-20年」
  •  

iDeCoを21年掛けている場合は800万円+70万円×(21-20)年=870万円の控除が受けられます。iDeCoで貯めた金額が運用益を含めて870万円以下であれば税金はゼロです。

ただし、この控除は会社員の退職金と合算されることに注意が必要です。例えば、退職金が1,000万円、iDeCoの一時金が800万円で、合計1,800万円を受け取るとします。退職所得控除額が870万円であれば、単純に差し引くと、1,800万円-870万円=930万円となります。会社から受け取る退職金とiDeCoの一時金を近い時期に受け取る場合、この2つは合算されて退職所得控除が計算されるので注意が必要です。退職所得控除を復活させるには20年受け取り期間をずらすなどの対策が必要となり詳しくはこちらを参照してください。会社の退職金が多い人は、「iDeCoを一時金で受け取れば必ず得になる」とは限らないことに注意が必要です。

公的年金等控除(年金で受け取る場合)

 iDeCoを年金形式で受け取る場合は、公的年金などと合算したうえで、公的年金等控除を適用され税額を圧縮できます。ただし、厚生年金、企業年金などにより年金受取額が多い人は、iDeCoの年金を加えることで課税所得が増える可能性があります。また、年金で受け取る際の金融機関に払う手数料も高額であるため注意が必要です。

(3)長期の分散投資ができる

 iDeCoは老後資金を目的とした長期制度です。iDeCoで扱われる商品は定期貯金のほかに投資信託が選べます。iDeCoで取り扱われている投資信託の中から、適切な商品を選択して長期運用すれば、リスクを分散しながら資産形成を行えます。お勧めの投資信託は株式のインデックスファンドです。信託報酬が0.5%以下のものを選ぶとよいでしょう。幅広い銘柄を対象とする株式のインデックスファンドを購入すれば分散投資が可能でリスクを抑えて運用できます。さらにリスク(運用している資金の増減の変動)を抑えたい場合は海外債券や定期預金を加えておくとよいでしょう。さらに、これらに加えて少額のゴールドやREITを加えるのも1つの投資方法です。

繰り返しになりますが、投資信託を選ぶときは、投資信託の過去の運用成績というよりも、信託報酬などのコストに注目しましょう。信託報酬は、投資信託を保有している間、継続的に差し引かれる費用です。一見すると年率0.1%や0.5%程度の小さな差でも、20年、30年と運用を続けると、最終的な資産額に大きな違いが生じるため信託報酬はできるだけ小さなものを選びましょう。

iDeCoの注意点・デメリット

(1)原則60歳まで引き出せない

iDeCoで最も重要な注意点は、原則として60歳まで資産を引き出せないことです。住宅購入費、子どもの教育費、自動車購入費、医療費などが必要になっても、基本的にiDeCoの資産を取り崩すことはできません。そのため、生活費や生活防衛資金までiDeCoに回してはいけません。まずは普通預金などで、急な出費に備える資金を確保し、そのうえで余裕資金をiDeCoに回しましょう。一般的には、会社員であれば生活費の3カ月から6カ月分、自営業者や収入が不安定な人であれば、より多めの現金を準備しておくと安心です。家計に余裕がない状態で拠出額を増やすと、クレジットカードの分割払いやカードローンを利用することになり、かえって家計が悪化します。

iDeCoは、当面使う予定のない資金で行うことが原則です。また、iDeCoの老齢給付金は原則60歳から受け取れますが、60歳から受け取るには、原則として通算加入者等期間が10年以上必要という条件をクリアする必要があります。期間が10年未満の場合は、加入期間に応じて受給開始可能年齢が61歳から65歳まで繰り下がります。以下のような人もiDeCOを始めるのは待ったほうがよいでしょう。

  • ・借金がある人
  • ・生活防衛資金がない(生活費に余裕がない)人
  • ・数年以内に住宅購入や教育費などの大きな支出がある人
  • ・近い将来に収入が大きく減る可能性がある人
  •  

高金利の借入金がある場合は、iDeCoで運用するよりも、借入金の返済を優先したほうがよいでしょう。

(2)手数料がかかる

 iDeCoでは、加入時、掛金の納付時、資産管理時、給付時などに手数料がかかります。また、金融機関によって、運営管理手数料や取り扱っている運用商品が異なります。iDeCoの掛金が少ない場合、手数料が資産にかかる影響は相対的に大きくなるので注意が必要です。金融機関を選ぶ際は、知名度じゃなくて手数料に注意しましょう。楽天証券、SBI証券などのネット証券は運営管理手数料が無料の場合がほとんどです。

(3)運用結果によっては元本割れする

 iDeCoでは、掛金の預け先を定期預金などの元本確保型商品だけでなく、投資信託が選択できます。投資信託を選んだ場合、株式市場や為替、金利などの影響を受けて元本割れする可能性があります。長期投資ならば元本割れする可能性はかなり小さくなりますが、一応は注意しておきましょう。若い人ならば元本割れしても取り返す時間は十分にあるので問題ないことが多いのですが、年配の方で解約間際で暴落が発生して元本割れしてしまうと老後設計が狂ってしまうおそれがあります。これを避けるために、iDeCoの取り崩し時期が近づいてきたら、資産全体に占める株式比率を下げて、定期預金の割合を増やすことも1つの手でしょう。年齢や受取時期に応じて、定期的に資産配分を見直しましょう。

若い人など運用期間を長く確保できる人は、国内外の株式に投資することで大きなリターンが狙えます。株式の投資信託は価格変動が大きい一方、iDeCoのように10年以上の長期間運用できればマイナスとなってしまう年もあるかもしれませんが長期的には大きな資産形成ができるでしょう。

ただし、株式の投資信託がお勧めですが、株式の値下がりに耐えられないと感じられるのなら株式比率を下げるとよいでしょう。代わりに債券や定期預金の比率を増やします。重要なのは、「最も高いリターンを狙える商品」ではなく、「値下がりしても継続できる商品構成」としてiDeCoを運用していくことです。

NISAと使い分け

 iDeCoとNISAは、どちらも税制優遇を受けながら資産形成できる制度ですが、目的が異なります。iDeCoは老後資金の形成を目的とし、掛金の所得控除を受けられる一方、原則60歳まで引き出せません。NISAには掛金の所得控除はありませんが、必要なときに資産を売却して現金化できます。そのため、次のように使い分けるとよいでしょう。

  • ・老後まで使わない資金:iDeCo
  • ・住宅、教育、旅行などにも使う可能性がある資金:NISA
  •  

急な出費に備える資金は普通預金でプールしておきましょう。iDeCoとNISAの2択ではなく、資金の目的に応じて組み合わせるのがいいでしょう。iDeCoの拠出によって税負担が軽減された分を、NISAで積み立てるという方法も1つの方法です。

2026年12月から制度が拡充

 iDeCoは、2026年12月1日に制度改正が予定されています。会社員や公務員などの第2号加入者については、企業年金と合わせた共通の拠出限度額が月額6万2,000円に引き上げられます。自営業者などの第1号加入者については、国民年金基金と合わせた共通の上限が月額7万5,000円に引き上げられる予定です。さらに、一定の条件を満たす人については、iDeCoの加入可能年齢が70歳未満まで拡大されます。iDeCoの利用は今後とも増えていくと思われます。

まとめ

 iDeCoは、自分で掛金を積み立てて運用し、原則60歳以降に受け取る私的年金制度です。主なメリットは、次の2つです。

  • ・掛金が全額所得控除になる
  • ・受取時に退職所得控除や公的年金等控除を利用できる
  •  

一方で、iDeCoは原則60歳まで引き出せないこと、手数料がかかること、運用によっては元本割れすることに注意が必要です。 また、節税に目がくらみ掛金の上限まで拠出することは避けます。まず生活防衛資金を確保し、当面使う予定のないお金の範囲で、無理のない金額を長期間積み立てるのがよいでしょう。また、NISA、預貯金なども含め、資金の目的に応じて制度を使い分けるとよいでしょう。

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