株式投資の儲けは、どこからくるのでしょうか?
まず思い浮かぶのは、企業が上げた利益です。企業がたくさん利益を出せば、その分、株主に配当という形でお金が入ってきたり、株価が上がったりします。これが株式投資の基本的な儲けのしくみです。でも、それだけではありません。株式の価格は日々変動します。つまり、株を持つことで「値下がりするかもしれない」というリスクも引き受けているわけです。このようなリスクを取る見返りとして、投資家は「リスクプレミアム」と呼ばれる、追加の儲けを期待できます。ここでは、このリスクプレミアムがどういうものなのか、わかりやすく説明していきます。
リスクプレミアムとは
リスクプレミアムとは何でしょうか?
それは、リスクのある対象に投資するときに、リスクのないものよりも多く得られると期待される「追加の儲け」のことを指します。ここでいう「リスク」とは、価格が変動することです。ただ単に「危険」という意味ではありません。実際には、予想よりもうまくいって大きな利益が出ることも「リスク」として扱います。つまり、「良くも悪くも結果がブレる可能性がある状態」がリスクです。リスクプレミアムは、こうした不確実性(リスク)を引き受ける代わりに受け取れる、ご褒美のようなものです。
Dr. めたる
次の例を考えながら説明してみよう。例えば、
A : 無条件で1万円貰える場合
B:確率1/2で3万円貰える、確率1/2で1万円没収
のどっちがよい?聞かれたらあなたはどっちを選ぶ?
図1 あなたならどっちを選ぶ?
ここでちょっとだけ計算します。AとB、それぞれについて、確率に基づいて「もらえる金額の期待値(=平均的にもらえる額)」を計算すると、どちらも1万円になります。つまり、AもBも、計算上ですがもらえる金額は同じということになります。
SP500ちゃん
AとB変わらないと言われても私はAを選ぶわ。Bはうまくいけば3万円も貰えるけれども・・・お金を取られるという可能性は避けたいわね。
Dr. めたる
そうなんだよ。SP500ちゃんように考える人が多い。どうやら人間はお金が減るのをとても嫌がる性質を持っているみたいなんだ。
Aのように確実に増える投資は無リスク投資と呼ぶことにします。無リスク投資は元本保証のことです。例えば、貯金は一般的に元本が保証されるので無リスク投資ですね。国債も国が保証しているので無リスク投資と見なしても問題なさそうです。
Dr. めたる
無リスク資産の国債の利率を1%としたとき、満期まで持てば元本の返還と1%の利益が得られる。
図2 元本保証の国債
SP500ちゃん
無リスク資産は、元本保証っていうのが強みよね。利子は高くないけど。
Dr. めたる
では、この国債が売られている状況で、次の株Cが売られているときS&P500ちゃんはこの株Cを100万円で買うかい? 確率1/2で3万円儲かり、確率1/2で1万円損する株だよ。
図3 100万円で販売される期待値が+1万円の株C
SP500ちゃん
うーん。買わないわね。損する可能性があるものは避けたいわね。期待値を計算したらどっちも同じね。期待値が同じ場合、損する可能性がある株Cを買う必要があるの?
Dr. めたる
もちろん1万円以上儲かる可能性もあるけどね。でも人間の性質上、期待値が同じならリスクのない資産が好まれる。そうなると・・・どうなるかというと株Cは1万円より安く売られることになる。もし、株Aが値引きされて100万円で売られていたものが99.5万円になれば期待値が1.5万円になるよ。リターンで計算すれば1%だったのが1.5075%になるよ。
図4 100万円が99.5万円に割引された株C
利益率 = 1.5万円 ÷ 99.5万円 = 1.5075%
SP500ちゃん
なるほど。それなら株Cを買ってもいいわね。割引されて初めて安全の1%の国債と1.5075%の株Cが同じの土俵に立てるというわけね。損する可能性があるものは安く売って利率を高めてやらないと買い手が現れないのね。
Dr. めたる
そう。リスクがあるものは、無リスク資産と比較して、高い期待リターンが求められるんだ。今回の場合だと1%より高い部分の0.5075%の部分だね。これが追加の期待収益であり、リスクプレミアムなんだよ。
株式や企業債などのリスクの高い投資は、より高い利益を提供する可能性が高いです。もちろん価値の減少する可能性もあるのですが・・・。投資家がこのような損する可能性がある投資に対して要求する追加の報酬が「リスクプレミアム」となるのです。損する可能性がある資産にはリスクプレミアムがつくことが一般的です。
Dr. めたる
リスクを取るとご褒美がある。つまり、リスクがないものよりリスクあるもののほうが期待できるリターンは高くなる。損する可能性があるからリスクプレミアムを狙うというのは人間にとってはジレンマがあるんだよ。
SP500ちゃん
損する可能性があるものは安くしないと売れない。だから、安く売られることになって自然と期待されるリターンが上がっていくのね。でも期待リターンはあくまでも期待値で平均的には儲かるってことだから・・・運が悪いと損をするのね・・・
Dr. めたる
国債よりも株式のほうが期待リターンが高くてお得だけど、その購入には一抹の不安が残る。そしてそれはしばしば現実のものとなる。
SP500ちゃん
損するかもしれない可能性を受け入れることができれば、無リスク資産より儲けられる可能性が高いのね。
Dr. めたる
株を買うと損するかもしれない・・・持っている間はずっと不安な気持ちになるけれども、それをじっと我慢してリスクプレミアムを取りにいくのが株式投資の極意。損する可能性を受けいれてリスクプレミアムを稼ぎ続けていくんだよ。
このように株式投資を行うとリスクプレミアムがある分、無リスク資産よりもお金を稼げる可能性は高いと言えます。しかし、それは損する可能性と表裏一体。絶対に儲けることができるものならそれは無リスク資産ですので、リスクプレミアムは消えて期待リターンは無リスク資産と同じとなります。(もし、元本保証で高利回りを謳っているものがあればそれはかぎりなく詐欺に近い商品でしょう。)
リスクを減らしてリスクプレミアムを稼ぐ
SP500ちゃん
でも期待リターンを高くしたまま、損する可能性はできるだけ小さくしたいよね。
Dr. めたる
それができる1つの方法が分散投資なんだ。分散投資すると期待リターンを極力減らさず、損する可能性や損した場合のその大きさを減らすことができる。
SP500ちゃん
わかったわ!分散投資を実現する良い手段がインデックス投資なのよね。
Dr. めたる
そうそう。S&P500ちゃんは分かってきたね。それじゃあ僕たちもインデックス投資でリスクを下げてリスクプレミアムを稼ごう!分散投資するとなぜリスクが低下するかはこちらを見てね!
第3回 ポートフォリオとポートフォリオ効果複数銘柄の株を組み合わせ持つことによって、株式資産のリスクを大きく低下させることができます。リターンについては複数銘柄の平均値となります。ポートフォリオを組むことよって、平均的なリターンは確保しつつ、リスクを低減することができるのです。これを「ポートフォリオ効果」と言います...
補足
リスクがあるものはリスクプレミアムを獲得できそうです。では競馬や宝くじでもリスクプレミアムを期待できるのでしょうか?
回答としては、競馬や宝くじを購入する際にリスクプレミアムを期待することは一般的には難しいとなります。競馬や宝くじは投資とは異なる性質を持っています。これらはギャンブルの一種であり、企業が儲けを稼ぎ出すわけではありません。宝くじや競馬で大きな利益を得る可能性は存在しますが、これらのゲームの設計上、平均してプレイヤーは投じた資金よりも少ないリターンを得ることになります。つまり、これらのゲームは期待値がマイナスであり、一般的に「負の期待値」と呼ばれます。負の期待値にはリスクプレミアムを期待することはできません。胴元が儲かるシステムなのでいくらリスクを背負っても平均的にはリターンを期待できません。リスクプレミアムを得るには期待値がプラスであることが必要なのです。正の期待値が期待できる代表例が株式投資なのです。
参考文献
リンク