投資理論

本やSNSで勉強すれば個別株投資で勝てるようになるか?

SNSや巷の本屋さんでは株式投資の指南本が溢れています。これらの本を読めば株式投資に勝てるようになるのでしょうか?

神の方程式

この疑問に応えるために、一つの仮定を考えてみましょう。ある人が素晴らしい投資方法を編み出したとします。そして、その成績はバフェットの成績を凌駕するものだったとします。彼がその素晴らしい投資法を世界中の人に知ってもらうために本やSNSでその投資法を紹介したとします。

あなたはこう思うでしょう。「その本はきっとベストセラーになるだろう。多くの人がその投資方法を実践するだろう。」と。では、次に起こることは何でしょうか?結果は以下が予想されます。その投資法に基づいて選ばれる株は一気に買われてしまい、あっという間に値が上がってしまいます。特に株式投資を専業にしている人やAIなどは先回りして株を買おうとするでしょう。そうなると、その投資法でターゲットとなる割安な株はなくなってしまいます。つまり、その投資方法の有効性が失われてしまうのです。投資方法が優れていればいるほど、有効性を失うスピードが速いのです。

Dr. めたる
Dr. めたる
株式必勝の「神の方程式」を見つけてもそれを公表してしまうとアッと真にその有効性は失われてしまう。
SP500ちゃん
SP500ちゃん
神の方程式が普通の方程式になってしまうのね。

このメカニズムに詳細については「現代ポートフォリオ理論講義(根岸康夫著)」の第6部結論に書かれています。そして、著者の根岸さんは以下のように結論付けています。

「念のためもう一度言う。神の方程式が存在する可能性は否定できない。しかし公表されても誰も得をしないので、公表されることはありえない。」

現代ポートフォリオ理論講義(根岸康夫著)

常勝の高リターンファンド メダリオン

ただ、根岸さんは「神の方程式の存在の可能性は否定できない」との結論でしたが、勝利の方程式があるのかもしれません。それは、米ヘッジファンドが運用するメダリオンというファンドの存在です。メダリオンは「ルネサンス」という世界トップクラスのヘッジファンド(創業者ジム・シモンズ)の旗艦ファンドです。メダリオンは30年近く年率約40%という驚異的なリターンの記録を叩き出しています。これは、勝利の方程式なくしては達成できないと思われる数字です。

そして、このメダリオンを運用するルネサンスは極端な秘密主義を取っています。自分たちの投資手法が公になると、リターンの源泉がなくなることを知っているからです。ですから、ファンドの出資者さえにもその手法を明かしてはいません。

神の方程式は秘密にすべき

もし、あなたが神の方程式を見つけたら、それは絶対に秘密にしなければなりません。その方法が有用であればあるほど秘密にする必要があります。自分だけの秘密にして、その神の方程式を使うのです。世間に明かしてしまうと、その方法は近いうちに無効になり、誰の得にもなりません。自分だけが儲けて世間に申し訳ないと思って公表しても、それは何の意味がないものになってしまうため秘密にするのです。自分が手に入れた神の方程式でものすごく儲けたという事実を自慢がしたいのなら公表する価値があるのかもしれませんが。

このような理由から、巷にあふれる個別株の投資手法は、世間に公表しても大した影響のないものばかりになります。つまり、大して役に立たないか、実行するのが不可能なものになってしまうのです。

それでも個別株で勝ちたいなら

あなたが個別株投資において、本屋やインターネットの情報を鵜呑みにするようでは、まず勝てないでしょう。勝つためには自分なりの投資方法を開発する必要があるのです。

とはいえ、最初は本やSNSから情報が欲しいかもしれません。そのような場合、個別株投資の本や情報を選ぶときに、「勝てる!」、「必ず儲ける!」と言ったタイトルがつく本は避けるべきです。個別株投資をどうしても手掛けたい場合、まず手に取るべき本は教科書的な本にするべきです。たとえば、常に中立的な立場で投資について説明する後藤達也さんの『転換の時代を生き抜く投資の教科書』などが参考になるでしょう。

効率的市場仮説とインデックス投資

僕は「効率的市場仮説」が概ね正しいと考えているので、個別株で勝つのは相当に難しいと考えています。努力すれば勝てないこともないかもしれませんが、その努力は途方もないものになるのは間違いないでしょう。なにせ、あなたが勝とうとしている相手はテスタさん、ウォール街の凄腕トレーダー、最先端のAIなどです。彼らがはじき出した株価が割安であるか、割高であるかをあなた自身が判断しなければなりません。

買おうとしている会社が成長著しいから今後も株が上がりそうと安易に考えて買うのでは、ギャンブルと変わりません。成長著しい会社の株は既に高値がつけられていて割高なのです。その割高の株を買うということは、ウォール街の予想よりもさらに大きく成長できると確信できるときだけなのです。

僕はインデックス投資で市場平均を取りにいくことをお勧めしています。これは、リスクプレミアムを集めていく投資方法です。インデックス投資以上のリターンを得るためには、株式投資で稼ぐよりも、労働で稼ぐほうがはるかに簡単だと考えます。

インデックス投資でも、5%~8%程度のリターンが見込め、それでも十分に大きなものです。想定以上に資産が膨らめば、FIREへの道筋が見えてくるかもしれません。もちろん、リスクがある投資なので、資産が減ってしまう可能性もあります。目減りしたらまぁ諦めて長めに働くというような感じでよいと思います。それくらいの距離感で投資を続けていきましょう。

蛇足の情報。メダリオンを運用するルネサンスですが、同社が運用する「ルネッサンス・インスティチューショナル・エクイティーズ・ファンド」が2020年通年の損益率でマイナス19%というニュースがありました。神の方程式にも賞味期限があるのかもしれませんね。

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