1 非農業部門雇用者数(NFP:Nonfarm Payrolls)とは
非農業部門雇用者数(NFP: Non-Farm Payrolls)とは、米国において農業部門を除く産業に従事する労働者数の増減を1,000人単位で表す経済指標です。簡単に言えば労働人口が増えているか減っているかを示しています。毎月分の統計が、原則として翌月の第一金曜日、ニューヨーク時間午前8時30分に発表されます。本指標は、米国労働省の下部機関である労働統計局により発表されます。労働統計局の職員数はおよそ2,300人です。
非農業部門雇用者数は、文字通り非農業部門であるため農業従事者は含まれないほか、自営業者や軍人も対象外です。基本的には給与支払いが確認できる雇用者がカウントされて集計されます。
2 非農業部門雇用者数と株式投資
市場参加者は非農業部門雇用者数の事前予想値から株価を予想しており、その株価は既に織り込んで発表当日を迎えます。そのため、発表直後に「実績が予想を上回ったか下回ったか」によって株価が変動します。
予想より増加した場合
→ 景気が強いと解釈 → 金利上昇 → 株式にマイナス(特にハイテク株)。
好景気と判断され株価が上昇することも。
予想より減少した場合
→ 景気悪化懸念 → 利下げ期待が高まり株式にはプラスなることが多い。
ただし、極端な減少は景気悪化が警戒されて株価が値下がりすることも。
3 集計方法
非農業部門雇用者数(NFP)は、労働統計局が実施する「事業所調査」に基づいて計算されています。調査は約12万の事業所と政府機関を対象とし、そこから提出される約60万件の給与支払い記録を用いて雇用者数をカウントされると説明されています。
調査する事業所と政府機関は、米国全体の産業構造を代表するように、業種・地域・規模ごとバランスよく選ばれているようです。また、大企業と中小企業では雇用者数の規模が異なりますので、調査した大企業と中小企業の比率が全米の実態と一致するように人数調整を行い、全米の雇用者数を推計する仕組みとなっているようです。
4 非農業部門雇用者数の修正
NFP(非農業部門雇用者数)は、まず当月分が速報値として発表されますが、同時に前月分の修正値も公表されます。修正は前々月分にまで及ぶことがあります。速報段階では一部の事業所からまだ回答が得られていないため、翌月の発表時に追加データが反映され、前月分や前々月分が更新されます。こうして雇用者数の推定値の精度が高められいきます。
このため、雇用統計の発表時には、当月分(速報値)に加えて、前月分(第1次改定)と前々月分(第2次改定)が同時に公表されるのが一般的とされています。
修正される理由
非農業部門雇用者数は当月分の速報段階では、全事業所から回答が揃っておらず、回答率はおよそ65〜70%に留まっているようです。そのため、翌月以降に遅れて届いた残りのデータ(最終的な回答率は90%以上)を反映して数値が修正されるようです。
また、この非農業部門雇用者数は全数調査ではなくサンプル調査であり、実際には全事業所のうち約1%程度しか直接調べられていないとされています。
さらに、雇用には強い季節性(夏の観光業、冬のホリデー商戦、教育現場の新学期など)があるため、統計的に季節調整が行われますが、特殊要因があると補正がうまく働かず修正の要因となっているようです。
加えて、Birth-Death Model(企業の新規開業・廃業を推計するモデル)によって、サンプルに含まれない雇用変動を補正的に加算・減算する仕組みがありますが、このモデルと現実との乖離が大きい場合にも修正幅が拡大することがあるようです。
2025年の6月分の非農業部門雇用者数は、7月に+147,000人と発表されたのが、8月の改定値で+14,000 と1/10に修正され、さらに9月の改定値では-13,000人に修正されました。
・速報値の段階で回答率が60%と低かったこと
・季節調整がうまくいかなかったこと
・州・地方政府の教育関連部門では、想定以上の雇用減少したこと
・小売、専門サービス、建設業 などでの雇用過大計上分されていたこと
・Birth-Death補正の誤差が大きかったこと
が原因のようだ。要するに全部がダメだったということ。
